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プロジェクトマネジメントの話とか

「プロジェクト管理」をはじめ、心理学・ライフハックの話を中心に、ビジネス全般について書いています


口下手なプログラマと体育会系SEの処世術―7つの習慣【第6の習慣】から考える。


タッグでシナジー効果を
photo by John Wiechecki

 体育会系SE「では、明日までによろしくお願いしますッ!!(スキルはあるけれど、いつも無口で何を考えているか全くわからん。この人とは合わんわ……)」

 職人系PG「はい…了解…です(彼は声ばかり大きくてガサツで大雑把。いつも勢いだけなんだよなー)」

 チームでよく見かける光景です。水と油のこの二人がこの先生き残るためには、どうしたらよいのでしょうか?結論から言います。協力し合えばいいのです。単純明快です。でもそれがなかなか実現できません。

 自分と相手が協力し合えば1+1が「10」にも「100」にもなる「シナジー」(=相乗効果)という概念。個人的には7つの習慣の中でも最も*1難易度の高い概念だと考えています。

 難易度の高さに比例して「抽象度」も高くなっているため、頭で何となく理解して終わり、で済ますだけなら簡単なのですが、いざ実践しようとすると激ムズのハードモードとなります。

 今回は具体的にどのように行動したらシナジーの実現に近づけるのか、考えていきましょう。

※第6の習慣「シナジーを創り出す」は第1~5の習慣がベースとなるため、その関連記事も併せてお読みいただくと理解が早いかと思います。(リンク集は、当記事の最後尾に掲載)
特に「シナジーの概念・具体例」については「「Win-Win」の大きな勘違い―Google社と7つの習慣【第4の習慣】から考える。 - プロジェクトマネジメントの話とか」にて深く言及しているのでオススメです。

 今回も『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』をベースに進めていきます。

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人と人は分かり合えない?

 断言しましょう。人と人は分かり合えません。これは家族であろうが恋人であろうが親友であろうが同じです。

 身も蓋もない話かもしれませんが考えてもみてください。DNAは元より、生きてきた環境も異なれば、受けてきた刺激・情報も全く異なります。脳内の神経細胞の挙動も、一人ひとり全く異なるわけです。100人の人間が存在すれば、そこには100通りの価値観、考え方があって然るべきだということです。ごく当たり前の話をしていますが、これを日頃から意識できる人は残念ながらごく少数です。

 「から揚げにレモンをかける派」の気持ちは「かけない派」には理解できません。逆にあのカラッとした食感を大切にしよう!という気持ちも理解されません。(残念ですね……)

 普段、会議で議論を行っていても同様です。異なる価値観を持った者同士が集って、意見が衝突しないわけがありません。もしあなたの意見に賛同してくれる人がいたならば、むしろそれは本当にラッキーだ!という認識を持つべきなのです。人と意見が衝突して頭にキタ!などと感情的になるのは愚の骨頂です。

 みんな仲良し和気あいあい、満場一致で万事解決!そんな妄想からはいい加減卒業しましょう。そんなことが毎回可能なら、みなさん人間関係で悩んだりすることはありません。毎週日曜の夜にみなさんがサザエさん症候群になることもありません。世間の退職・転職理由の9割が「人間関係にある」という話を聞いたことがありますが、おそらく事実でしょう。今ブームになっているアドラー先生も、こう言っていました。

人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。
――アルフレッド・アドラー

シナジーを目指してどこまで両者は近づけるか?

 さて、上記前提を受け入れて、晴れてスタートラインに立つことができました。そこから歩み寄りの作業が始まります。自分とは全く異なった異次元の生命体に歩み寄るのです。怖いですねぇ、恐ろしいですねぇ。(古)

 自分が余裕をもって「Win-Win」を目指したとしても、余裕のない相手は常に「己のWin」のみを目指して突進してくるかもしれません。むしろそのケースが圧倒的に多いかもしれませんね。

 歩み寄るための相互理解のためには、コヴィー博士が繰り返し提唱する「信頼関係の構築」が最も重要となります。下記エピソードをご覧ください。

第二次世界大戦後、アメリカ合衆国は新設された原子力委員会の委員長にデビッド・リリエンソールを任命した。リリエンソールは各界の実力者を集めて委員会を組織した。どの委員もそれぞれの分野で強い影響力を持ち、自らの揺るぎない信念に基づいて行動する人物だった。
(中略)
リリエンソールは委員同士の信頼口座の構築に数週間を費やし、委員たちがお互いの興味、希望、目標、懸念、経歴、判断基準、パラダイムを知り合える機会を設けた。立場を超えた人間同士の交流を促し、絆を強めることに時間を使ったのである。(location 5816)

 リリエンソール氏は、はやる世界トップクラスのメンバーらをなだめ、信頼関係の構築に全力をあげるわけです。途中、厳しい批判にさらされることになりますが、価値観の理解に全精力を傾けることで、結果的に大きなシナジーを作り上げることに成功したのです。急がば回れ。この考え方が重要になります。

 この話、あなたの職場にも同じことが言えるのです。素性が良くわからない相手と一緒に深い仕事をする。しかも、どのような価値観を持っているのかを知らないまま。これほど非効率なことはありません。雑談をしましょう。ランチに行きましょう。飲み会があれば積極的に参加しましょう。同性同士なら下ネタで盛り上がりましょう。口下手であれば聞き役に回ればよいのです。

 特に、新しいメンバによる新プロジェクトが発足した際にキックオフ飲み会が催されることがよくありますが、この会を欠席するということは自殺行為に等しいと考えておいたほうが良いでしょう。よく知らないメンバを深く知る絶好のチャンスでもあるわけです。

 また、コヴィー博士は内面にもシナジーを発生させられる、と説きます。

直観的、創造的、視覚的な右脳、論理的、言語的な左脳、この両方を使いこなせれば、脳全体をフルに働かせることができる。つまり、自分の頭の中で心理的なシナジーを創り出せるのだ。(location 5956)

相互依存の人間関係においては、他者のパラダイムをコントロールすることはできないし、シナジーのプロセスそのものも自分ではコントロールできない。しかし、あなたの影響の輪の中には、シナジーを創り出すための多くの要素がある。あなたが自分の内面でシナジーを創り出すとき、その努力は影響の輪の中で完全になされる。自分自身の分析的な側面と創造的な側面の両方を意識して尊重し、その二つの側面の違いを生かせば、あなたの内面で、創造的なエネルギーが解き放たれるのだ
(location 6163)

 何だか難しい話になってきましたが、要約すると自分の中に存在する左脳的思考(分析的)と右脳的思考(創造的)の両面を意識して駆使することで、自分の中にシナジーが創り出されるので、その結果相手にも影響が与えられ、信頼関係ができるということになります。

 コヴィー博士は「自分の中のシナジー」を「右脳と左脳の連携」で表現していますが、もう一つの私の考えとしては「一度、相手の意見を理解し、相手の意見と自分の意見を自分の中で統合(=自分の中のシナジー)」し、それを相手に対して表現する、ということも言えると考えています。

 また、相手をコントロールすることは不可能ですし、突如発生するシナジーのプロセスをコントロールすることもできません。結果が出るまでにどの程度の時間的投資が必要かも見えないでしょう。ある意味「流れに身を任せる」覚悟と内面の安定が必要です。その基礎を作るための第1~5の習慣だというわけです。

自己開示のスパイラルへ

 そしてチャンスを見て、自分を開示することから始めましょう。殻に閉じ困らずに素の自分はこういう人間なのだ、と相手に伝えることで、相手はあなたに対して親近感を持つことになり、メッセージを受け取った相手も自己開示を始めることになります。自己開示の好循環の始まりです。少しずつ仕事に関係のないプライベートな話もしてみましょう。

 下記「図1」は、関係スタート直後の状態です。この時点では当たり障りのない話題ばかりで、プライベートの話はあまりありません。

二人の間に距離があり信頼関係がない状態

図1:ガードが固く距離がある状態

 次の「図2」は、片方が自己開示を行うことで相手が反応する良い循環を表します。「あなたが勇気をだして踏み出した一歩」により、状態は「図1」から「図2」へ徐々に移行します。

自分から開示することで好スパイラルへ

図2:自己開示することによる好循環

創造的な活動のほとんどは、予測のつかない出来事がつきものである。先が見えず、当たるのか外れるのかもわからず、試行錯誤の連続である。だから、こうした曖昧な状況に耐えることができる安定性、原則と内なる価値観による誠実性がなければ、創造的な活動に参加しても不安を感じるだけで、楽しくもないだろう。こういう人たちは、枠組み、確実性、予測を過度に求めるのだ。(location 5695)

 なかなかスムーズにいかない、という大前提を理解することが大事です。理解していれば、すぐに結果がでなくても心が折れることはありません。また、困難であるからこそ信頼関係が構築された場合の効果は絶大なものとなります。

「持たざる者」の知性

 聡明な人間は、自分の能力に限界があることを知っています。

自分と他者の違いに価値を置くことがシナジーの本質なのである。(location 5944)

 自分にない能力を持つ相手を尊重し、その相手を知ろうと努力し、知ってもらおうと努力することで信頼関係ができあがります。その上で二人の強みの掛け算が爆発したとき、10人分、20人分の仕事が実現可能となるのです。企業にしても一部の天才を除き、同じ人間は二人も必要ないのです。

当記事の冒頭で、対照的な二人を例に挙げました。この二人を仮に

  • 突出したスキルを持ちながらも、コミュニケーションに難があり仕様調整ができない「内向的な職人系プログラマー」
  • 細かい技術的な話はからっきし分からないが、持ち前の明るさとずば抜けた交渉力・要件策定能力で乗り切る「外交的な体育会 系システムエンジニア」

だとします。

職人系PG「土曜…秋葉原でフィギュア…」
体育会系SE「いや……結構です。ところで来週土曜にBBQがあるんだけれど、ご一緒にどうでしょうか?」

といった、全く噛み合わない会話も、いずれは

職人系PG「あ…その…仕様は…」

体育会系SE「よしわかった!お客様と調整するから、残りのモジュールを今日中に実装しておいてくれ!」

(お客様へ電話――)

体育会系SE「お世話になってますー!例の仕様変更の件ですが、やはり…ええ。そこを何とか!ああ、あの店!?可愛いコ多いですよね!今度行きましょう!じゃあ!」

体育会系SE「うまいこと断っておいたからネ!」

職人系PG「これ…」

体育会系SE「ええッ!?もうできたのっ!?」

などという奇跡のシナジーを起こせるかどうかは全くもって定かではありませんが、信頼関係は短時間で構築できるものではないが、決して不可能ではない、という原理原則を理解した上で相互理解を継続することで、やがて道は開けていくでしょう。



人と人の「コミュニケーション」が仕事の成果の9割を決めます。これに業種・職種は関係ありません。


さあ、今夜も反りの合わない彼を交えて飲みに行こうか!

 

 

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

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*1:第8の習慣:「効果」から「偉大」へ、という意味不明なラスボスを除いて……


photo by Philip Chapman-Bell

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